日本で唯一…ドイツよりクオリティ証明書がAkitaHam.へ

日本で唯一…ドイツよりクオリティ証明書がAkitaHam.へ

【ドイツで新しい動きを見せるクオリティ証明書に日本から唯一AkitaHam.】

フォル氏からの突然のメールはとても嬉しいものになりました。クオリティ証明書にAkitaHam. が選定された、というものだったのです。

フォル氏とマイスター秋田

【フランツ・フォル氏とは?】

ハム・ソーセージの価格の安さに疑問を持ったことはありますか?
加工品は加工品、と認識しがちですが、元は肉を加工したもの。加工という手間が加わっているにも関わらず、肉より安い加工品があるのは何故?冷静に考えれば非常に不思議な食品です

私にとっても長年の疑問であり、それを解決してくれたのがフォル氏でした。彼の著書がもとになり、ドイツで大きな社会問題となり、度々テレビ番組で取り上げられました。その番組を見た私は、長年の疑問が解決し、大変な感銘を受け直接彼とコンタクトをとり、彼の自宅まで招かれたのです。

お会いしたフォル氏

【有名なDLG ドイツ農業協会主催の証書の限界】

【有名なDLG ドイツ農業協会主催の証書の限界】
センセーショナルな見出しでドイツのテレビ番組では報道されました。本来破棄する骨や筋、血液から採取 したたんぱく質パウダーに水、安さの秘密はフォル氏により明らかになったのです。『肉』を使わない加工品が安さを生み出すということです。

ただしそれらが使用されている科学的証明が出来ない。数年がかりで、大学教授ヴィトケ氏と証明する手立てを発明。ドイツの伝統を守るための証明書を発行するに至ったのです。

センセーショナルなドイツの番組

テレビ番組内では、実際にフォル氏が『捨てるはずの原材料』でDLG コンテストに出品。見事にメダルをとってしまいました。後日、番組がDLG ドイツ農業協会にその事をインタビューするも拒否。コンテストの価値が問われることになったのです。

日本でも、DLG コンテストに一品数万円で参加することが可能です。
今回、私が頂いた証明書にはコンテストはありません。ただ日頃の仕事を認めていただき、無償で頂いたも ので自らとりにいったものではないというところに、大変な価値をかんじています。

証明書と当店マイスター秋田

AkitaHam.生ハム・サラミ。ラボラトリ

生ハムが変わる。 伝統に従う。

1) 起こり

2020年ころから、今まで通りの製法でうまくいく場合とそうでない場合の差が激しくなってきました。そして2022年そろそろ動いていかないと生ハムが出来なくなる、という危機感を抱き今一度、伝統というものを掘り下げてみようと思い立ったのがきっかけであります。

2) ドイツ製法を見直すきっかけ

生ハムというものを更に深く考えるきっかけになったのは、ドイツ製法を見直したことにあります。ドイツで修業した私が唯一受け入れ難かった製品が、生ハムでした。イタリアタイプへの憧れからそういった製法で製造をして今日まで来ました。その中でも、特にシンプルな製法を選び製造を行ってきました。そして今回の件で今の製法を変えていかなければならない、となったときに、改めてドイツ製法を掘り下げて行くことにしたのです。極上の燻製物がそこにはありました。他国にも燻製タイプの生ハムはありますが、燻製タイプの中において味・香りの最上位に君臨しているものがドイツタイプであると考えています。

掘り下げて行く中でそれは他国にはない唯一無二の存在であると、認識させられました。

生ハムという言葉で一言で括っても、これほど多種多様で自由なのだと、一気に視野が広がったと感じました。

3) ドイツタイプとイタリアタイプ

個人的な考えで、燻製物の最上級がドイツタイプ、ノンスモークの最上級がイタリアタイプとしております。
時間がかかるものですが、出来次第順次あげていきます。

ドイツタイプ

3a) 燻製物の最上級・ドイツタイプ

燻製物の生ハムを生ハムとして受け入れられた瞬間から視野が一気に広がりました。

世界的に有名なシュヴァルツヴァルト(黒い森)の生ハム、シュヴァルツヴェルダーシンケン。北ドイツホルシュタイン州の名産品カーテンシンケン。または南チロルのスペック。それらの最上級の燻製物のスパイスをオリジナルミックスし塩漬け後、燻製にかけていきます。燻製期間は伝統を重んじ最低1週間。肉の様子をみながら、じっくりとゆっくりと燻製にかけていきます。

ラックスシンケン

ラックスシンケン

1,080円(税込)
赤身の部分、ロースを塩漬け後に燻製、ゆっくりと熟成させました。芳醇な味わいをお楽しみください。ラックスとはドイツ語でLachs(鮭)、サーモンピンクであっさりとした生ハムです。
シュバイネハルス

ハルスシュペック

1,080円(税込)
独・燻製コッパ。肩ロースを塩漬け、スモークしゆっくりと時間をかけ熟成させました。程よく脂があり、噛みしめるほどに熟成の香りと燻製の香りを楽しめます。赤ワインにおすすめです。
バオホシュペック

バオホシュペック

1,080円(税込)
独・燻製パンチェッタ。ロースを塩漬け、スモークしゆっくりと時間をかけ熟成させました。脂があり、噛みしめるほどに熟成の香りと燻製の香りを楽しめます。赤ワインにおすすめです。
ドイツ 生ハム

ドイツ 生ハム

1,080円(税込)
塩漬け、燻製後じっくりと熟成させました。燻製香・肉のうまみを楽しむタイプの生ハムで、重い赤ワインにもよく合います。

イタリアタイプ

3b)イタリアタイプ

大々的に伝えられている製法とは何か。

ドイツ製法にも言えることですが、それは大企業の管理された熟成室で成り立つ製法です。代々続く個人店を見てみると、まったく真逆と言われるような工程をふむことがあるのに、しばしば驚かされるのです。そういった伝統製法をひとつひとつ参考にして作り上げます。

イタリア生ハム

イタリア生ハム

1,080円(税込)
ノンスモークの熟製品です。自然熟成由来の濃厚な香りは、シンプルなパンに載せて召し上がられるとより一層引き立ちます。白ワイン・シャンパン・赤ワインと幅広く相性の良い生ハムです。
コッパ

コッパ

1,080円(税込)
新しくなったコッパは、伝統に習い塩漬け後、天然腸にくるんでゆっくり静かに熟成させています。所々、自然発生した白カビが熟成を助け香り高く、そしてダイナミックな味わいを生み出しました。口に含んだときの溶け出す脂に赤身の旨味を堪能してください。熟成期間は4~6ヵ月です。
和牛の生ハム

和牛の生ハム

1,080円(税込)
生ハム再編の一環でリニューアル。“スイス名産ビュントナーフライシュ”やイタリアのブレサオラのスパイスから独自ブレンド。香り・旨みを生かした和牛の生ハムです。
イタリアサラミ(赤ワインサラミ)

イタリアサラミ(赤ワインサラミ)

1,080円(税込)
赤ワインをふんだんに混ぜ込み、長期熟成させたイタリアタイプのサラミ。
長期熟成から生まれる爆発的な香りに酔いしれてください。
赤ワインサラミ ミニ

赤ワインサラミ ミニ

864円(税込)
ノンスモークのイタリアタイプサラミ、ミニサイズ。
カチャトーラ。
ついつい手が出てしまう旨味の凝縮されたサラミです。

4) “伝統”とは与えられた環境で最善最高を探る

伝統を守っているものにとって、それは当たり前のことをやっているに過ぎません。与えられた場所でいったい何が出来るのか?そのなかで最高のものを作るには?そんなことを考えながら与えられた環境の中で、ふさわしい場所を選定し、熟成させていくのです。

今回、このように危機感を持った時に、管理させた環境を作る。つまり設備投資をするという事も視野に入れましたが、それでは今までのポリシーにも反してしまうと立ち止まり、改めて伝統を探りました。

出来上がり次第、順次販売していきますが、みなさまに御紹介できる日を今から楽しみに、ワクワクしています。

マイスター秋田

年末年始営業時間のお知らせ

お客様各位

◆年末年始営業時間のお知らせ◆

覚王山店の営業日は
12月11・18日
1月7日より再開

本店
30日 通常営業
31日 お休み
1月1日 お休み
   2日 お休み
   3日 営業再開 ランチあり。15時まで
   4日 ランチあり。15時まで
   5日 ランチあり。15時まで

1月10日(月・祝)営業いたします。
   11日~14日 休業
   15日土曜日から営業再開

何卒よろしくお願い申し上げます。

会員ランクアップのシステム不備についてのお詫び

会員各位

お世話になります。
本日、会員ランクアップのシステムに不備が見つかりました。皆様には大変なご迷惑をおかけし申し訳ございません。

本来、お買い物が楽しくなる様な形で企画したものですが初歩的なミスでランクがシルバーよりアップしない旨のご指摘を頂戴しました。

細部まで確認が出来ていなかったという反省もあります。今回はお客様の御指摘で判明することができ感謝の気持ちでいっぱいです。何か不備などございましたら、どうぞお気兼ねなくお申し入れ頂ければと存じます。

お詫びといたしまして下記のように対応させていただきました。贈り物やご購入の際にお役立ていただければと存じます。

今後とも何卒宜しくお願い致します。

【御対応処置】

・レギュラー会員の方で対象期間中に一回でもご購入があった場合シルバー会員へ。
・シルバー会員の方はゴールド会員へ。
・ゴールド会員の方はプラチナ会員へ。
・プラチナ会員の方はスーパープラチナ会員へ。
・スーパープラチナ会員の方へ1000ポイントプラス処理。

AkitaHam
秋田 健博
2020年11月11日

gedankenlos ゲダンケンロース

25mプールを端から端まで眺めた様な印象を受けた。

それだけたくさんの冷蔵または冷凍ショーケースが並んでいた。これはその巨大スーパーを部門で分けた場合の『肉』に関わる部分、だけの話である。

それ以外のもの、例えばチーズ、お菓子類ドリンクusw.(Und So Weiter エトセトラ)は、また別に数えきれない種類の同カテゴリーの商品が並ぶ。この場所に来れば、取り敢えず一日時間はつぶせそうだ。

ロベルトの説明を受けながら、自然と歩幅で距離を確認していた。目視と合わせるとやはり20mくらいはあったと思う。後から後悔したのはショーケースの数を数えていればよかったという事。ショーケースには決まったサイズが基本的にはある為だ。そこから計算できたはず。

2つのショーケースが背中合わせにずらりと並んでいた。それが3列。。。中には肉は勿論、ハム・ソーセージがこれでもかと鎮座していた。

IMG_20190705_171339

先回までもお話しした通り、個人店が少ないのも納得がいく。というべきか少なくなった経緯が想像できる。

ハムソーセージはドイツでは伝統食、それ故に元々個人店は多かった。

しかし、このような巨大マーケット、そこに卸す大規模メーカーの出現で値段で勝てなくなり個人店は消滅していく。当初はそれほど劣悪な商品を製造していたとは思えない。日本と同じく敗戦国であるドイツは同じような経緯を辿って成長してきたはず。

食べるものがない時代、空腹を無くしたい、国を豊かにしたいという強い思いで薄利多売で良いものをと製造に励んできたに違いない、そこにはものづくりへのプライドと責任感が存在していたはず。これは現代の経営者とは明らかに違う点で、必ず何かしら崇高な志があったはずだ。

ある程度豊かになれば、個人の生活レベルで豊かさを求めるようになる。そこからま更に急成長していくだろうが、同時に賃金も何もかも上がる。それと共に物価も上がればよいが、(よく言われる)玉子と同じようにドイツの肉・肉加工品は未だに安い。

会社を守るため・従業員の生活を守るためという大義名分のもと、添加物や本来入るはずのない混ぜ物で利益を確保する劣悪な商品が並ぶようになった。その時には多くの個人店は消滅し、個人店の客であった人々も止む負えずここに来る。そしてさらに規模は大きくなる。きっとこのショーケースの数はその結果だろう。

完璧な商品にチャレンジしてきた仕事、つまり我々の商品はこうでなくてはならない、から、この値段なら売れてコストも抑えられるし利益も上がる、に変わっていった。まあまあで安ければ消費者は買うだろうという事だが、そこには商品に対する想いもプライドも既に存在しない。

背中合わせのショーケースの中央部には、サラミやメットヴルストが掛けられるようになっていた。ショーケースの数だけでも圧巻だがさらにその境目にまで商品が並ぶ。そして3列のショーケースを抜けると、次には同じようにサラミ・メットヴルストなどの非加熱熟成品のみが掛けられている棚がこれもまた同じ距離だけ続く。いったいどれだけの同種が並んでいるのだろう・・・

この地域でメットヴルストというと柔らかいタイプのサラミを言う。北ドイツでは一般的で、見かけることも多いと思う。サラミやメットヴルストは非加熱製品。非加熱の為、温かい燻製(温燻おんくん)はかけれない。ということは冷たい燻製(冷燻、れいくん)をかけたもの。冷燻をかけた燻製品は地域の名産品といっても過言ではない。(うなぎの燻製なども有名。)

そのメットヴルストを手に取ってみた。想像していた『手触り』よりも数段柔らかく驚いた。ただミンチを人工ケーシングに詰めただけというとその柔らかさが想像できると思うが。。。

※一般的に言うメットヴルストはそういったものだが地域性を考えると『サラミ』なのでそこから想像すると、という意味。

ミンチ肉位柔らかい。確かにそういったものは存在するがこのように、無差別に人に触れられる場所で常温に置くには衛生面で危険すぎる。こういった商品は冷蔵でしっかりと『呼吸』させゆっくり乾燥させる状況にないと衛生的に厳しい。裏を返せばそれでも大丈夫なように作られている、という事だろう。手に取った商品の2つ目3つ目後ろに掛かっていた商品はところどころ変色していた。

ロベルトは次に自分たちのショーケースを案内してくれた。

ここにも先程、ショーケースに入っていた大規模工場の商品とかぶる商品が並ぶ。

ただ違うのは、スーパー精肉部製またはスーパーのオリジナルということ。

精肉部から対面で買うか、他メーカーのものを自ら手に取って買うか。

メーカーのバリエーションにも富んでいるが、買い方のバリエーションにも富んでいる。

私がショーケースの前でロベルトの説明を聞いていると、突然子供がロベルトたちのガラス製ショーケースに上る。一瞬の出来事だった。

ロベルトが、間髪入れずに注意に入り子供を丁寧に降ろす。だがその子の父親は憤る。所謂、逆切れというやつだが、子供に寛大すぎて何も伝えられない、教えられない、注意出来ない親を最近よく見かける。真面目なロベルトはそれでも引き下がらず危険性をしっかりと説明していた。

『ガラスが割れて危険です。実際にそういった事故もありました。お子さんも怪我をしますし、商品も破棄しなければなりません。』

長引きそうな押し問答に日本社会を重ねている自分が居た。

寛大なことは悪い事ではないかもしれないが、それは時に動物以下にしか扱っていない気がする。なぜなら可愛いペットの飼い犬や飼い猫にはしつけをしっかりするはずである。パワハラと教育、しつけの境界線がぼやけているように感じる。人間の子供には何故しつけをしないのだろう、と思う事が最近多い。大人になって社会に出て恥をかかせるためにワザとそうやって育てているのなら良いが、人間が自分の子供を人扱いせず一人前の人間に育てあげないのだからなんとも滑稽である。大人になって社会にもまれたとき、気付けばよいが・・・きっとその状態で大人になった時にはそれまでに人間力が磨かれていないから、相手の真意を理解できない大人になっているだろう。もちろん暴力は論外なのだが。

しつけは漢字にするととても美しい字で日本人の美徳を感じる。

しつけ=躾。

そういえばどこかの誰かが『おもてなし』と言わされていたが、果たしていつまで日本人としての美徳は守られるのだろうか、と考えだすとキリが無くなってまるで禅問答のようになってきた。

気付けば子供と父親は移動を始めていた。

私の『禅問答』と同じくロベルトとその子供の父親も平行線のままのようだったが。。。

スーパーのネットショップを見ると肉製品の数は200種類に及ぶようだ。

ただ、実際にはその何倍も多く陳列されている。

消費者はこのスーパーに入ったら、どう思うのだろう?

種類の豊富さと安さに歓喜し、目を輝かせるのだろうか?きっとそのはずである。

ここで選んで買うという行為が一つのステータスになる、そんな消費者も非常に多いだろう。

違うメーカーの同種のサラミ・メットヴルストが20メートル並ぶ。

違うメーカーの同種の焼きソーセージが10種類以上並ぶ。

同じ種類のソーセージだけで一つの棚を上から下、右から左まで占拠。

それに加えてロベルトたちスーパー精肉部の、それらとは別の対面販売式のテーケ(Theke 販売ショーケース)肉・マリナーデ(味付け肉)ハム・ソーセージがこれでもかと並ぶ。

一体、何をもってこの中で自分好みの(例えば)メットヴルストを選べるのだろうか?

違うメーカーの数えきれない(例えば)メットヴルストを味見するのに何年かかるだろう??

味見をしている間にまた違うメーカーの同種のソーセージが現われる可能性だってある。

初めは意気揚々と選ぶつもりでいても同じものが並ぶ状況に、もはやあれこれと考えることは出来ない。

それでは何で判断するのか?

数が多すぎて思考は停止し簡単なフレーズやパッケージングの絵や写真が決定権を持つ。

例えば

よりナチュラルなフレーズに惹かれたり、自然を感じさせるようなスパイスや原料肉の絵や写真、地産地消にこだわったという文言、厳選素材・・・(日本語で考えてもキリがない。)

原材料表示を見ればそうではないことは容易に想像できるが、そのときには既にあなたの思考は停止している。

そうやって消費者は勝手にイメージを作り上げ。より良いだろうと勝手にイメージ出来た商品を選抜し、買うべき商品を選ぶ。

一度立ち位置を変えてメーカー側から見てみよう。

乱立した同じ種類の商品群。

何もしなければポツンとあなたの商品は孤立してしまう。

対面式ではないため、人が付いて説明することもない。

その中で一体何が出来るだろうか。

買ってもらうために最大限努力できることは味ではなくパッケージングと魅力的な文言、カラー、消費者の中で良いイメージを作り上げるしか方法はない。

ロベルトがチーズをはじめ他の売り場も案内してくれた。ひととおり回った後、最初のショーケースに戻るとロベルトの同僚で女性のステフィが居た。

明日、カーテンシンケンを製造している個人店を案内してくれる、その人だ。青く透き通った目が印象的な彼女は、もともと販売員の見習いでそのフライシャライに入ったそうだ。今日は休みを取っている口うるさい理不尽な上司も、ステフィには甘いようだ。

販売員の見習いを始めた彼女だったが製造に興味を持ち女性ながら製造の修行に入った経歴の持ち主である。少し前にマイスター取得にも挑戦し、マイスターになった。彼女から感じられたのは、個人店の作る手作りの商品を本気で愛しているという事。

個人店の急激な減少は、こういった志のある職人が手作りの現場での求人が無く、大手で働くしかないという構図も生み出している。

彼女が入れ替えていた商品の原材料表示にはEナンバーが羅列されているのが垣間見えた。

ステフィと明日会う場所と時間を確認し巨大マーケットを後にした。

ロベルトと彼の娘をKindergarten(キンダーガルテン)に迎えに行きロベルトの奥様と合流。

皆でハンブルグ中心部の歴史あるレストランで食事。娘の無邪気な笑顔が忘れられない。

ハンブルグ名物ラプスカウスが想像以上においしい。魚のグリルも文句なしのレストランだった。単純な料理程、腕が試される。ラプスカウスはおいしくないという評価もあるが、こういった単純な料理程、おいしいと不味いがはっきりすると思う。間違いなく良い料理人にあたった。

※ラプスカウス・・・ハンブルグ名物のじゃがいもにコーンビーフやピクルスなどを混ぜたマッシュポテトのような料理。

sdr

港町ハンブルグの夕日を見に新しくできたコンサートホールのエルプフィルハーモニーへ。

入場無料で上層部のテラスまで上がれる。

dig

太陽が燃えるとはよく言ったものだ。力強くも優しい赤色に近い橙が海に落ちていく。

夕焼けに染まるロマンチックな世界最大の赤レンガ倉庫群を後にロベルト一家とお別れ。

mde現実離れした巨大マーケットに幻想的な夕焼け・・・から一気に現実に戻る。トルコ人経営の安宿に戻らなければならないことなど忘れていた。。。

ひとり電車に揺られながら真っ暗な外を眺めていた。

頭にはステフィが持っていたサラミのEナンバーがよぎっていた。

※Eナンバー

E番号とは主にEU(ヨーロッパ)で使われている添加物を表す番号。例えばE339はリン酸ナトリウム。というように番号により添加物を振り分けたもの。EはEuropeのE。

gedankenlos 安易な、考えのない

お客様の声

デパートやスーパーで私、秋田が実際に言われたこと、店舗・メール・お手紙などでスタッフ含め私が頂戴した御言葉を掲載しています。



 『今まで食べていたものが作りもののように感じました!』 20代女性 

『家呑みに重宝しています。』 40代男性 

『ちゃんと作業されているからでしょうか、香りが全然違います。』30代男性 

『贈り物に喜ばれるので、お中元・お歳暮はこちらで、と決めています。』60代ご夫婦 

『ランチで利用していますが、ある時から市販の加工品の違和感に気付くようになり 味覚が敏感になったのだと思います。』40代 主婦 

『(1週間のデパート催事にて)初日に購入し、その日のうちに食べて気に入ったのでまた来ました。』40代 女性

 『加工品は苦手なのですがおいしく食べれました!』20代女性 

『(高級スーパー内での催事で試食の際。ソーセージは嫌いという方に対して、私が吐き出してもいいので、と試食をしていただいた際。)変な味がしない!食べれるし美味しい!』40代 女性 

『子供にアレルギーがありますが、本当に入っていなくて安心しました。子供も喜んで食べてくれました。親としても嬉しい限りです。』20代女性 

『アレルギーがあります。市販のアレルギー物質の入っていないものを選んでいますが美味しさは追求できません。こちらの商品に出会って良かった。』40代男性 

『見た目やパックの状態などは簡素で派手ではない、しかし中身は本物。私たちもそうならなければならない。』取引先 会長 

『本当に不純なもの(添加物)が入っていない味。』取引先 会長 

『はじめは少し塩辛いと感じました。食べていくうちにそんなことはなく、今までの加工品の味に慣れすぎていたのだと分かりました。今では今までのものが甘く、気持ち悪く感じています。』 60代 ご夫婦 

『お酒のおつまみによく合う。』30代 男性 

『旦那に買っていくとすぐ無くなって・・・大事に食べてよ!と思う・・・』50代主婦 

『何かの時の為に冷凍でストックしています!』20代 男性 

『おいしいけど・・・塩気が気になると言いました。その場合ボイルのものは長く、焼くものは一度ボイルしてから焼いてくださいと言われ試しましたが、その通り美味しくいただきました!』 50代 女性 

『災害などに備え冷凍スープをストックしています。』20代 男性

 『ブログなどを見て、こういったハムソーセージを作っている人がいるんだ、と感激しました。 応援しています。』 30代 男性

 『白カビが待ち遠しいです!』40代 男性

 『(催事場にて、お客様がさっき食べた白カビと同じ?との質問に、全く違いますので食べてみてください、もし合わなければ吐き出してください、とのやり取りの後。)先ほどのは気持ち悪くて食べれなかったけど・・・全然違う!』30代 ご夫婦 

『レモン汁を入れてボイルしろとか、こうやって食べろとか・・・他店では言われますが、秋田さんは、そんなことしなくても美味しいものは美味しいですよ、と言ってくれた。本当にその通りだと思う。こうしなさい、とはある意味、逃げ道、のようでそう食べなければ美味しくないと言っているようなものに感じていたから。実際に食べてみて、美味しいものは美味しいという事が本当だと、実感できました!』40代 男性 

『自分で購入するにはハードルが高いのですが、大切な人への贈り物には必ず利用しています。』 50代 女性 

『ランチで食べているうちに舌が肥えた?正常になった?からか市販のものは食べなくなりました。』 30代 男性

 『(イタリアンやフレンチ)レストランで加工品を食べたときに今まで感じなかった違和感を感じるようになってしまいました。』 40代 男性

 『ブログやホームページを見ていてちゃんとしていると思い、まずランチから利用しました。今では皆におすすめしています。』 30代 主婦 

『食品の検査を自主的にやっているなんて、他には聞いたことがないです!』 30代 ご夫婦 

『ブログなど、消費者に真実を伝える努力をしている。』 60代ご夫婦 

『イベントで購入しお話しを聞いて、本物、だと思いました。遠方ですが定期的に通っています。』 60代ご夫婦

 『これほど筋を通している加工品あるだろうか?』40代 男性 

 『(普段苦手だが)食べれた!』 男の子  

『(ランチ)スープはひとりで全部食べたい!』 小さな女の子 

『こどものアレルギーで探していたが美味しくないものが多くて。。。ようやく見つけられた!』 20代主婦

『発色剤を使用する場合の説明など、とにかく詳しく説明があり納得して買い物が出来ました。』 50代 女性

『たまたまブログやフェイスブックで見て、内容が面白くかなり前から読んでいました。ずっとチェックしていましたがようやくランチに来ることが出来てやっぱり食べてよかった、ブログに書かれていることは本当なんだ、と感激しました!』 20代 男性

『ネット通販で定期的に利用しています。家族に大変喜ばれています。』 40代 女性

『ヨーロッパのもの、ヨーロッパらしいものを販売しているお店はたくさんあります。海外赴任の経験がありそういったものが好きですが、どれも納得いきませんでした。日本人向けに作られている店が全部と言っていいですが、こちらは違った。』 50代 男性

『たまたま行ったドイツの村のお肉屋さんで、こちらの事を教えて頂きました。秋田さんのことは知りませんが、そのお肉屋さんの対応・お話から愛されていて、しっかり修行されたのだと感じました。宜しく伝えてください、と言われたので突然連絡差し上げました。』 70代 男性

Labyrinthラビリンス

窮屈なロッカールームを抜けると大きな冷蔵庫と冷凍庫そしてゲヴュルツカンマー(Gewuerzkammer:スパイス倉庫)があった。先回お話しした通り、見慣れない赤白基調のスパイス袋を見つけた。赤白の別のメーカーも存在する。 当然、ドイツのメーカーではあるものの知らないメーカーだった。 そこを抜けると馴染みの機械が顔を出した。クッター(Kutter カッター)これは絹引きのソーセージ生地を作る機械(そればかりではなく混ぜたりすることだけにも用いられる。)日本ではエマルジョン状の生地、というと理解できる方も多いかもしれない。 そしてWolf(ヴォルフ:ミンサー。ミンチにする機械)パッケージングする機械・・・と続く。 燻製庫は少し使い辛そうなところにある。無理やり部屋を作ったか、もともとスーパーマーケットを建築する際、それぞれの部門の場所割だけして後付けで機械を増やしたのかもしれない。三角のデッドゾーンに置かれている、そんなイメージ。大きな燻製庫は窮屈そうに立っていた。 精肉部門とは言えスーパーマーケット内で作っているとは消費者にとっては中々嬉しい事ではないだろうか? ふと最近の日本のスーパーマーケット事情が頭によぎる。 棚に置いてある肉加工品に変化が表れてきていると皆さんも感じたことはないだろうか。 今までの商品のほかに肉などを販売するように発泡スチロールのトレーにラップされた生ソーセージ的なものを見かけないか。まるでそこで作ったかのように、フレッシュさを売りにしたような。 興味本位で手に取ったことがある。 まさに『手作り感』を誇張した商品で、原材料表示を見れば一目瞭然。消費者を小ばかにした商品のひとつである。 製造者と販売者、消費者の売買の闘いである。 内容が伴えば悪い事ではない。しかしながらどのように売れば買うか、極論で言えば、究極そこにしか特化していない。 マーケティングやセールスという名のもとに『売る』研究は盛んで、心理学から脳科学の分野にまで及ぶ。『無意識のうちに手にとってしまう、買ってしまう』簡単に言えばそういう研究だ。 残念ながら消費者は常にその『実験台』となっている。 製造者の意図とは離れたところで、最終的な販売者が更に横着になる場合もある。 これは私が実際に体験した紛れもない事実なのでしっかり聞いてほしい。 昨今、マルシェや小さなイベントごとが全国的に旺盛だ。 今までの祭りの出店とは何か違うお洒落な今どきの店の前に消費者が並ぶ。 インスタ映えもするだろうし、店側もそういった意識でいる場合もある。取り敢えず全国的に流行っている。 さて立ち位置が変われば色々なものが見えてくる。消費者の立ち位置から見えなかった事が出店者の私だから分かった。売り手の思惑と消費者のその商品に対する信頼は必ずしも一致しない。むしろベクトルは真逆、が多い。 先ほども述べたように、今まであった祭りの出店などとは比べ物にならないほどのクオリティーの商品に出会う事も多いだろう。その中で、ソーセージを販売されている出店者は多い。それは私のように専門店としてではなく、メインの商材のサイドメニューで置かれていることが多々あるからである。 そしてそれらは『手作り感』をもって販売される。(サイドメニューのソーセージでも実際に手作りしているところは勿論あるし、手作りのものを買い付けている場合もある。) ある日、不思議な気持ちになった。よく見ると似たようなソーセージばかりである。どれもがスパイシーなど香辛料がきいている、と表現されるようなソーセージだった。見た目も、味の表現もかぶっている。 ある日Aスーパーに買い物に行った時の事である。 そこには簡易的なものだけを買いに行く。簡易的とは、私のハムソーセージ作りに必要なものではなく、ランチに使う際必要なイタリア産トマト缶や砂糖・食用油などである。時間のある時に、ふと冷凍ショーケースに目が留まる。 そのソーセージがそこにはあった。 業務用なのである程度の量が入っている。(1キロ)それに加え(このような商品があったのかと思ったが。)製品は不完全なままパックされていた。 不完全なままとは、ソーセージが繋がっているのである。 想像しにくい方もおられると思うので簡単に補足する。 出来上がったソーセージの生地は腸に詰めていく。詰め終わると今度はひねっていく。ひねるとはつまりソーセージのあの形にしていくのだが、ワンペアずつひねるのが通常だ。つまり2本ずつソーセージが生まれる。この時はまだすべてが繋がった状態。 その後、燻製するなり火に通すなりして完成したら1本にばらし包装する。 ※上記実物の写真は分からないように色を加工してあります。 ※気乗りがしなかったが味見の為に焼いた。焼いていると香りで酔ってしまった・・・焼く前はバジルの香り。焼きに時間がかかるので焼いていると気持ち悪くなってしまい食べられず。 試食した両親曰く、安物のハンバーグみたいな味、との事。私が焼いていた時に感じたのは手羽先のから揚げの衣の香り。ラベル表示以上にそれぞれの添加物の分量は多めなのではないだろうか。 その最後の手間を省いて圧倒的なコストパフォーマンスをしています、というのが製造者・小売業者の言い分だろう。もともと添加物だらけの安価なものを更に安くする努力というべきか、はたまた努力を怠ったというべきか・・・驚いたのは実際にはより不完全であったこと。こういう販売をする場合、切っていない両サイドは丁度コマ結びのように結ぶ。これはソーセージの生地が漏れないようにとか、変形を防ぐためだが・・・切ったまま、だった。 そしてそこに買い手が付加価値をつけることに成功した。これは製造者・小売業者は意図していなかったことだろう。 販売者はそこに目をつけ不完全な商品にエンターテイメント性をもって付加価値をつけた。 ソーセージが繋がっていることで見た目に『手作り感』が演出できる。そして焼く際、わざわざ切らずに焼き台に乗せ客の目の前で次々に切っていく。 この魅せるアクションに消費者はサイドメニューにもかかわらず魅力を感じその店の客単価に最大限の貢献をした。所謂ついで買いである。 そんなソーセージをサイドメニューとして販売する超人気店2店舗とイベントで隣り合わせになった時の話である。 営業前、話し声が聞こえてきた。 『店長、この間ソーセージについてお客さんに国産ですかということと、小麦や玉子は使ってないですかと聞かれました。』(アレルギー物質の有無) 『特別に作ってもらってるので安心してくださいって言っとけばいいよ。』 『国産という事でいいですね。』 『(俺たちも)分からないからいいよ、小麦や玉子は他のもの製造するときに使っているかもしれないので分からないって言っとこう。』 とても軽い感じの店長は笑い飛ばした。 バックヤードには当然、そのソーセージが、販売されているパック詰めのまま転がっていた。 業種を言えば特定できるので言えないが、キッチンカーでもテントでも販売している超人気店で東海地区なら知らない人はいないだろう。 もう一店舗も東海地区ではかなりの人気店だ。 同じく、何を販売しているか書けばすぐにどの店か特定できてしまうので、省略する。 こちらも同じソーセージを販売している。炭焼きでいかにも『手作り』を表現する。 それ以外にも目に余るところがあった。メインの商品に欠かせない野菜が地面に置かれた段ボールに転がっていた。無くなったら使用するのだろうが、この時はテントでの出店。スーパーで買ってきたばかりのレタスはその状態のままでラッピングされている。 どこで洗うのか? その疑問は最後まで消えなかったが・・・きっと洗わないのだろう。そもそもそんな設備は簡易なテントにはないし、その行為は保健所的にもNG。 この類のソーセージの売価は300円位(250円から350円くらい)で販売されることが多い。消費者からすると太く大きくボリューミーで、見た目にもコスパが良い。 コスパが良いのは消費者にとってだけではない、最終販売者にとっても圧倒的な利益を生み出す。90円にも満たないそのソーセージは300円に変わるのだから。必死に作るであろうメインの商品よりも効率よく儲けが出る。ただ買ってその場で焼けば良いのだから何の手間もいらない。 どれだけ儲けられたかだけがテーマで消費者に何かを伝えたいとかそういった事は微塵も考えていないだろう。 隣り合っていると味噌も糞も同じなようで何とも残念な気持ちになるのである。 燻製庫の後ろに立っていたロベルトの年上の同僚と挨拶を交わす。 先回話に出てきた口うるさいマネージャーではなく、とても気さくなおじさんといった感じの恰幅の良い男だ。テーケ(Theke販売カウンター)には肉からマリナーデ(味付け肉)ソーセージがたくさん並んでいる。さすがにカウンターに入りお客さんの目の前には出られないので、外側に回り案内を受ける。 改めてみた売り場は巨大なラビリンスだった。 対面販売のショーケースを脇に見て、まず向かったのはずらりと鎮座する冷凍・冷蔵ショーケース。 1・2・3・4・・・・ ロベルトの説明を聞きながらごく自然に歩幅で計測している自分がいた。

Tarnung ターヌング

ハンブルグ、トルコ人経営の安宿。 時差の影響もなく熟睡。現地時間の朝6時頃目が覚める。 まだ太陽は昇りかけたばかりだが昨日と同様、良い天気になる予感。鳥のさえずりと朝焼けが港町ハンブルグに良く似合う。 一階のわきに併設しているカフェで朝食を頂く。何でもない朝食が実はドイツの食の底力を見せてくれる。何気ないパン、ハム・ソーセージそしてチーズ、コーヒー、ミルクにバター・・・なくてはならないものが、高いレベルでとてもしっかりしている、職人の国といわれる由縁だと思う。ただ南ドイツで食べなれていると少々物足りなく感じるのも事実。やはり味に地域差は必ずある。 あるタレントがテレビ番組で、ドイツはどれも大味だったといっていた。それは残念ながら空港やその近くまたは大都市の中心部、いわば観光地で食べたのだろう。おいしいものに出会いたければ田舎に行くしかない。先に述べた、欠かせないものたちは特に南ドイツ・オーストリア・スイスがおすすめだ。そういった地域に行けば、料理、は必要なくなるほど旨い。 同じく別棟に住んでいる東欧人がひとり朝食に入ってくる。 軽く挨拶を交わす。 コーヒーをすすりながら出発時間を気にする。 今日はロベルトの職場を見学させてもらう。口うるさい、そして上に媚びへつらう上司からなんとか許可をもらってくれたらしい。ドイツ大手スーパーの精肉部門という事でとても楽しみにしていた。 待ち合わせは彼の仕事が終わる13時。 13時というとまだまだ時間がある。宿からは少し離れた場所にあったが街を散策しながら目的地まで行くこととした。 ロベルトへのお土産を持って8時30分出発。 ヨーロッパの良いところは少し歩けば必ず自然と触れ合えるような場所があるという事ではないだろうか?出発して間もなく大きな橋を渡る。出勤だろうかバスは満車で、すし詰め状態。朝日が橋も川も薄オレンジ色に染めていた。 二本目の橋を渡ったところに川の脇を歩いていける散歩道を見つけた。吸い込まれるように右に折れる。車や人通りは多いが、こうして木々に囲まれた散歩道に入ると静かで心が落ち着く。 ヒジャブを被った女性が遠くからランニングしてくる。芝生の上には少しだけ朝靄がかかっている。 スマホのナビゲーションを頼りに迷わず進む。日本では時間に追われていたため、のんびりしすぎて戸惑うが時間もあることだし休暇のつもりでゆっくり休みながら行く。 ベンチに座って対岸を見てみると、大きな工場ばかり、想像通りの光景だ。遠く巨大な煙突からは煙が立っていた。 出来る限り緑の多い道を選びながら進むが、パン屋、肉屋の個人店がなかなか見つけられない。 先ほどの大きな川に流れ込む、大人がひと飛びで渡れるほどのとても小さな支流を抜けると住宅街になる。右折してそこから500メートルほど歩くとようやくマンション一階部分にあるパン屋を見つけた。何か見つけたら入って食べようと思っていた私は、ペンションでの朝食はかなり控えめにしていた。 というわけでふらっと立ち寄る。小さな店だが客はひっきりなしに入ってくる。一人出ては一人入るといった感じだ。先ほどもコーヒーを飲んだばかりだが・・・コーヒーとパンを注文しイートインスペースで頂く。 ドイツでパンを食べる場合、私はプレッツェルやゼンメル、またはそれらを使ったサンドにクロワッサンを食べる。初めてドイツに行かれる場合、空港で食べてもどこで食べても美味しさに感動するに違いないが時間を経るにしたがって味の善し悪しの判別が出来るようになってくるはず。そうなるとやはり田舎の・・・個人店の・・・・となってしまう。 こちらの店は、完全にどこかで半調理したものを店に運び店内で焼くタイプの店だと確信した。とはいえそういったタイプの店でもすこぶる美味しいパン屋はある。及第点と言えるかもしれないが…近くに美味しいパン屋があるなら続かないだろう。 『写真撮ってもいいですか?』ひとりで切り盛りしているマダムに尋ねる。 『何でとるの?』 文面では伝わらない気だるい表情と冷たい対応に怯みそうになるが・・・ 『久しぶりのドイツで旅の思い出にと思って』何とか返す。 『・・・(しばし沈黙)わかったわよ』 プライベートでという事と、SNSには載せないという約束で取り敢えず撮ったものの、味も対応も何もかも全て後味が悪く店を後にする。(お店が特定できないものだけ掲載しました。) ドイツのスーパーマーケットの入り口付近にもパン屋がテナント出店している場合があるがそれとは別に、店内にセルフで取るタイプのパンが置いてあったりもする。味的にはそれと同等のレベルで個人店の良さの欠片もない。きっと元をたどれば大規模なパン屋が名を変え個人店らしく営業しているのかもしれない。個人店または個人店らしき店がないため、客は個人店だから美味しいはずとか安全だなどと思って入ってくるのだろう。 隣の店舗はクロアチア人が営んでいる小さな八百屋だった。外国人がとにかく多い。 道に沿って進むと左手に突然肉屋が現われた。パン屋とは目と鼻の先。こっちで食べれば良かった!ここでも先ほどのパン屋を後悔する・・・。しかしハンブルグの個人店※フライシャライは少ない。これを逃せばチャンスは中々ない。 満腹だが味見をしたい気持ちが勝る。 ※フライシャライ(Fleischerei)・・・肉屋。南部ではMetzgereiメツゲライともいわれるが北部ではフライシャライといわれることが多い。Fleischフライシュは肉の意味。オーストリアの一部ではFleischhauereiフライシュハウアライと呼ぶ地域もある。ハウアライに含まれるハウエンは叩く(等の)意味があり肉を叩く作業の工程が想像できるおもしろい言葉である。 気の利く美人の売り子に迎えられ、ソーセージとカーテンシンケン(Katenschinken)を注文した。美人の売り子の誘導に危うく余分の1本!となりそうだったが、ここは先ほどのパン屋に感謝・・・ 様々な生ハムが日本に輸入されている中でカーテンシンケンは馴染みがないと思う。 今回ハンブルグに来た目的のもうひとつはカーテンシンケンを見学することで、それは明日ロベルトの友人が案内してくれることになっている。 この個人店にも客はひっきりなしに入ってくる。 後日、インターネットで見てみると中々の人気店のようだ。 こちらの店では奥が加工場になっていて、先ほどのパン屋とは違い個人店でしっかり作っている店。しかし残念ながらソーセージの味は特別語れることがない。絹引きタイプの焼きソーセージと半分粗挽きタイプの牛肉生地のソーセージだったが・・・この生地をもし私が作ったら?きっと親方は失望するだろうし南部では生き残れないだろう。 絹引きの生地を作る場合、水分(氷)を混ぜる。それにより生地の固さを調整し、人に好かれる食感に仕上げる。具体的にそういったことが考えられていないと感じた。味も然り。 カーテンシンケンのほうは、それ専門に作っている別の肉屋から買い付けていると考える。なぜなら1~2か月ほど燻製にかける“部屋”が必要になってくるからで、加工場と店内から察するにそこまでする規模ではない。こういった場合、買い付ける場合が殆どである。初めて食べるものなので明日見学させていただくものと比べられるように記憶する。 個人店がこうなってしまうと、味でもプライスでも大手にはかなわない。 個人店に客が期待するものは何だろうか?フライシャライを後にし歩きながら考えていた。 美味しさ、安全性、手作りという安心感、差別化できる部分は色々あるが、そのどれもが考えられるものには到達していない。ただ少しの“勝手に想像してしまう安心感”のみを求めて足を運ぶのかもしれない。個人店だから安心だろう、という神話である。 以前ロベルトが正直に話していたことを思い出す。 『ハンブルグには魚介類がたくさんある。だから肉の加工品は弱いよ・・・』 後日、北部滞在中に見学した工房のバックヤードにあったスパイスの会社は南で過ごした私が知らない会社ばかりだった。地域に根付いていると考えられるが、個人店が少ないからか工場用のものが強いと推測できるし、個人店の少なさから、個人店同士のライバルはかなり少ないはず。それでは切磋琢磨も生まれないのだろう。 個人店同士のライバルも少ない、あるのは大規模な工場系加工場。わざわざ少ない個人店の為にスパイス会社が乱立し必死になるはずがない。クオリティーは確実にそこに現れている。 個人店だから美味しくて安心? どうやらターヌング(Tarnung)もあると消費者は覚悟しておいた方が身のためである。 そんなことを考えながらフラフラ歩いていると巨大なショッピングモールに辿り着いた。 ここがロベルトとの待ち合わせ場所。 彼の職場である大手スーパーマーケット以外にも他のスーパーマーケットが2件、家具屋、ペットショップ、文房具屋、電気屋など、何でも揃う。 まだ少し余裕があると思って一通り見て回るが、これが思いのほか時間がかかる。 そうこうしているとロベルトから終業の連絡が入り、急いでスーパーの入り口に向かう。中にはインビス(気軽に買い食いできるようなお店)もたくさん入っている。 遠くからでも直ぐに彼だと分かった。少しだけ息を切らしながら、再会を喜ぶ。 元気か?とお互いに言葉を交わし、直ぐにバックヤードへ。 私服の人間が中に居たら怪しいでしょ、と同じ制服を準備してくれていた。 大手スーパーマーケットの一員にカモフラージュして、いよいよ大手スーパーマーケット精肉部の見学が始まった。 ※ターヌング、タルヌング=カモフラージュ

強さ。

4月15日フランクフルト空港。 雲一つない青空のフランクフルトにひとり。 フォルさんと繋がってからあっという間にドイツ行きが実現した。この6年は何だったのかと思うくらい嘘のように。 ドイツ行きが決まってから、フォルさん以外に会う友人たちにコンタクトをとる。これほど綿密に旅の計画を立てたことはないかもしれない。それぞれ住む地域も違う友人たちばかりである。結局、フランクフルト空港を起点にドイツを一周することになるのだが。 フランクフルト到着後は直ぐにハンブルグのロベルトのもとへ。その後、オストゼー近くベルリンより更に北に上がったチュッソーに向かいフォルさんと会う計画を立てた。 その後は更にベルリンの南、バールートへ。マイスター養成学校で共に学んだゴードン家に居候する。バイエルン州に入り修行先のクンツ、ランヅフートのマイスター養成施設。バーデン=ヴュルテンベルグ州最古の町ロットヴァイルのガブリエルファミリーにお世話になる。 最後にまた8年過ごしたバイエルン州プリーンに戻りそこからオーストリア・ウィーンにある老舗レストランのカナッペを求め移動する。 正直、この移動距離には大きな不安があった。それに加えて飛行機は大の苦手である。。。 体調は、ほぼ完治したとはいえ体調を崩してから初の飛行機と長距離移動で、こういった場合の問題は、トラウマということか。実際に悲惨な思いをしたその体験から、『またそうなったらどうしよう』と思うのである。 フランクフルトのその空は、まさに私の想いを表すかのように晴れやかであった。 電車の待ち時間、日本で手に入れたフォルさんの本を読む。つくづく便利な世の中だ。フォルさんと出会って早速アマゾンで注文し程なくして本が届いた。 ひとり駅のホームのベンチに腰をかける。 久しぶりのDB(ドイツ鉄道)のアナウンスが心地よい。 私は昔の加工品づくりを模索してたくさんの失敗をした。その中で得た経験や知識、現代の加工品に対して感じたことが嘘のように彼の書いた本とリンクしていた。 そして彼はひとりで30年間闘ってきた。時代の流れから考えれば大変なことだっただろう。なぜなら、全く相手にされなかっただろうし消費者も全く興味のないテーマだったはずだ。これは日本においても同じことが言えるのではないだろうか?大々的に食の安全を取り上げるようになったのはまだごく最近の事である。一部の人間にとっては別だろうが、広くよりたくさんの消費者が関心を示すようになってきたと感じる。 彼にとって30年という月日は長く暗い時間だったはずだ。 Bio製品も有名なドイツであるが何故(今まで)これほどまでに添加物に無関心であるか、考えたことがある。それはドイツで許可される添加物の数によるものだと思う。そもそも許可数が少ないのだから、気にすることはない、というある意味では安心感が多くの消費者の心にあったはずである。 以前に添加物の許可数に関して日本とドイツを比べてみたことがある。添加物の許可数は変動することが多いが、その当時でドイツの許可数の4~5倍の添加物が日本では許可されていた。アメリカは更に多くなる。この割合は、今もそうは変わらないはずだ。 添加物に限らず何事もそうであるが、必ず真逆のものが存在する。アメリカがファーストフード大国で添加物大国であると同時に、Bioやフィットネスといったような体を気遣う事も最先端である所以は、その国の中に蔓延っているそういった部分があるからこそ排除したいという真逆の心理が芽生えるからである。そもそも安全であったドイツにそのような強い意志は芽生えにくかったと考える。その中で声を上げ続けたフォルさんの志は相当なものだったと推測する。 (以前書いた添加物の生地について興味のある方はページをリンクしておくのでご覧ください。) https://akitaham.com/hpgen/HPB/entries/39.html このように当たり前になった安心感が無関心を生んでいる状況は色々な場面で存在するはずである。 DB(ドイツ鉄道)のアナウンスが響く。 フランクフルト発ハンブルグ行き。 事前に購入していたジャーマンレイルパスに目をやる。今回は鉄道の旅で移動距離も多い、そのためキャリーバックはやめて、ひたすらにデカいノースフェイスのボストンバック型のリュックで旅をする。 少し慌ててリュックを背負い滑り込むように乗り込む。 ロベルトの待つハンブルクへ。 ロベルトは同じ食肉加工職人仲間である。彼との出会いは名古屋のAkitaHam店舗にて。彼が奥様(日本人)と帰国した際、名古屋のドイツレストランでソーセージを食べた。彼も作っている立場の職人故、その味がドイツではないと店側に伝える。そこでその店の店主が私のAkitaHamを紹介してくれた。次の日、早速お店に来てくれたのが初めての出会いである。 ここで言っておきたいのは、彼は実際に作っている職人で、どうしても納得いかなかった、だから店側に伝えたという事。これは私たちが寿司や日本食を海外で食べて悲しくなったり怒りが溢れたりするのと変わらない。彼がクレーマーではないという事をしっかりと伝えておきたい。なぜなら、知り合って、友達になった彼は非常に真面目で寡黙な青年だからである。ひと昔前の日本人のような、普段なら何も言わない、そんな気概を持った男である。 数年前、北ドイツの食肉加工メーカーの製品が日本にも入ってきた。スーパーでも見かけることも多いだろう。南ドイツのミュンヘンで育った私にはまったく馴染みのないメーカーで初めて聞く名前だった。 ただし何となく知っていたこと。 それは南ドイツには個人店が多く存在(正確には生き残っていて)北ドイツには大きなメーカーが多く存在するということ。 まさにフォルさんが危惧する事が多く行われている可能性のあるメーカーが多く存在する。 ハンブルクと一言で言ってもとて大きなシュタット(街)である。繁華街レーパーバーンもある。その地域に個人店の肉屋がたったの十数件・・・。 個人店が少なくなったとは言え南ドイツではあり得ないことだ。 ハンブルクに到着。 ここでは、トルコ人の経営する安宿に泊まる。期待はしていなかったが、その期待をも下回る宿に驚かされる。私が外人だからか・・・と勘ぐってしまうが部屋は後付けの建物にあり、まるで迷路。たどり着けずフロントに戻る。 どうやったら部屋に行けるの? 短期労働で来ていると思しき東ヨーロッパ人がその後付けの建物には多く泊まっていた。 ベット以外にはテレビも何もない只々広い部屋にひとり。やることもなくWifiを確認して就寝。宿についてからのすったもんだで疲労が増し、程なく、夢の中。無邪気な子供のように・・・ この時はまだ、翌日目の当たりにする大手食肉加工メーカーの『強さ』なんて知る由もなく。

迷い。

気が付けばドイツ滞在は8年になっていた。 バイエルンらしい、アルプスの少女ハイジに出てくるような景観。素晴らしくきれいなキームゼー(バイエルン州のキーム湖)の畔の町プリーンに8年滞在した。まだ薄暗い中、木々の間を這うように流れる小川を抜けて早朝、修行先まで通った。 修行が終わり、バイエルン州ランヅフートにあるマイスター養成学校に入校し、2008年の暮れに無事、国家資格であるマイスターを取得。2009年に帰国し、開店準備を急いで行い、その年の10月16日に無事AkitaHamを創業することが出来た。 それから1年に1回ドイツに行くという事が慣例になっていた。 しかしながら忙しくなるにつれ、渡独は遠のいていた。 ふと振り返れば6年以上ドイツに帰っていない。私の修行先で社長や親方と談笑したことが昨日の事のようでそれほど長い間、渡独していないとは思ってもみなかった。 ・・・それほど長い期間であることを忘れていた理由は忙しさ以外にもある。 それは日本での製造現場。 AkitaHamでの製造は私一人。 ドイツの機械に囲まれ、作りながら思うこと。 それは修行中のことである。これもひとつ、自分自身にとっては誰にも邪魔されない至福の時だ。 ラジオも音楽もない。あるのは機械の音と作業の音。そして頭の中はドイツの事でだらけ。親方に言われたこと怒られたこと、そんなことを思いながら楽しんでいる。楽しい思い出よりも怒られたことを思い出していることの方が多いかもしれない。。。 またそれ以外にもドイツを感じる場面に恵まれた。 創業してから、その間、たくさんのドイツ人がお客さんになってくれ日本に居ながら時折ドイツを感じることが出来たのである。 加えて有難いことに彼らは、ドイツへ帰国する際、ドイツで会おうと言ってくれた。それぞれが色々な地域から日本に来ていた。 帰国後も折に触れて連絡を頂き、いつくるんだと催促を受ける。お客さんの関係から友人関係になれたのも、本物志向で製造してきたからこそだと自負している。 そうやって日本でドイツを感じることが出来ていたことが渡独を遠のかせていた一因であったのも事実ではあるが・・・それとは別に折角の温かいメールに答えられない理由があった。 それは『忙しくなった。』とはまた別の問題を私自身抱えていたからである。 2017年12月、一年の最後のイベントに私は参加していた。フォルクスワーゲンの日本本社がある豊橋市のクリスマスマーケットである。豊橋市はフォルクスワーゲンのあるヴォルフスブルクと姉妹都市提携を結んでいる。 イベントが終わり、自分の体の異変に初めて正面から向き合った。それは突然のことで、何故だが無意識のうちに向き合っていたという方が正しいかもしれない。 あえて避けていた部分を初めて自覚した。そしてその瞬間に体調は一気に崩れた。 以前から運転中に違和感を感じることがあった。 運転していると突然、激しい動悸に加え時折手足の自由が奪われる感覚に襲われた。疲れているんだろうと、あえて向き合うことはせず目を背けていた。しばらくすればいつもの元気な自分が居た。 だが今思い返せば一年に数回、そういった事があったと思う。段々そういった状態の感覚が短くなってきた。最後には地下鉄も不自由になった。 そこで初めて真剣に『今の自分の状態』と向き合うことにした。 病院で検査を受けた方がいいのではないか? 脳の検査をした方がいいのではないか? など色々と助言を頂いたが、本質的な改善には中々ならないのではと思い病院には行かなかった。原因を知ってそれを改善していかなければ、結局治ったことにはならない、と強く思っていた。 加工品について疑問に思った事を調べる要領で調べると全く同じ症状に苦しんだ過去を持つ人を見つけた。 どうやら自律神経系の不調のようだった。 その方も運転と地下鉄がダメという状態でいきなり襲われる動悸、発汗とやはり体の自由が奪われるような感覚に悩んでいたようだ。 彼の体験談からどのように直したのか、また原因まで細かく説明してくれていた。 原因は3つ 1、姿勢の悪さ 2、体の冷え 3、精神的なストレス 3の精神的なものは直すことが難しいようだが、1と2に心当たりがあった。 鬱や自律神経失調症(鬱のような症状の場合)共通する姿勢があるらしい。それはパソコンやスマホを扱う方も気をつけなければならない姿勢だと思う。顎が引けていて背骨が真っすぐになり肩と手が前に丸まっていない状態なら良いのだが、長時間の作業になっていくうちに姿勢が乱れたところで楽な姿勢を取ろうとする。その姿勢がまさにそういった症状の方に多く見られる姿勢だという。顎が上がり肩が上がった状態で肩が前に出て丸まっている姿勢。 実際に私の作業も前かがみになる仕事で、その姿勢が長時間続く。繁忙期にもなれば24時間続けて作っていることもある。 正しい姿勢を取ろうとしても、痛くて全く取れなかった。ご指摘の通り、その姿勢で固まっていたのである。 2の体の冷えも心当たりがあった。 私は無類のコーヒー好きで、皆様ご存知の通りコーヒーは体を冷やす。加えて作業は冬は外気と同じくらい、夏場はクーラーが強くかかっているので常に寒い。その中で夏場はアイスコーヒーを飲んだりしていた。 最後にドイツに行った2013年からその間についた習慣が体に不調となって現れたのだ。 それからはまさに地獄の日々で不安定な状態は続いた。固まった姿勢を意識的に治すことは本当につらい。なぜならそれが自分にとっては現在の『普通』の姿勢になっていたからである。コーヒーも適量に変えるが、今までの普通が無くなるわけでこれも辛い。 (コーヒーの事を悪く言うわけではなく、適量以上飲んでいた自分が悪いという意味で)悪い習慣はたやすく身につくが、良い習慣ほど、『自身の普通』に落とし込むのは難しいものである。 当時はいつまで仕事が出来るんだろう・・・とそんな超不安定な状態であったが、不思議と製造しているときは気分が落ち着いた。 ドイツの事を想像したりドイツの機械に囲まれているから何となく安心感を感じるという事以外に、商品は良くも悪くも嘘をつかない、その嘘をつかないという事が安心を生んで気持ちも安定していたのだと考える。間違いがあれば、必ず自身に非があるし、そこにはロジックしかない。 神のように崇められ満面の笑みを浮かべているような職人や料理人もメディアでは目にするが、我々は、無から何も創造できない。すべては良き材料あって初めて成せることである。 話は少々ずれてしまったが、ヨガをやったり、ジムに通ったり正しい姿勢と体を温めるということに専念した結果、ほぼ回復した。約1年くらいかけて、何となく状態は上向きになり、それからも継続した結果、ほぼ回復できた。 フォル氏との出会いはまさにそのタイミングだった。 実際に会って直接話が聞きたい。SNSで繋がったのが2019年3月。 6年間考えることのできなかったドイツ行きが一気に現実味を帯びてくる。 不安定な迷いも跡形もなく消え去っていた。

ページトップへ